母を看取った娘「え」様の語り

老衰の母を娘が看取った語り

 父を、私と母で病院で看取ったことがある。その経験から母は自宅での看取りを希望していた。病院にいるのが嫌いで、初めから病院に抵抗があった。食べることができなくなって救急病院に行った、点滴をしたら「少し元気にはなるけど、治るものではない。しかも病院では入院はさせられない、一日二日考える間は入院させられるけれど、治る病気ではないのでどこか別の病院か施設に移ってもらうことになる」と言われた。元気なときから施設は入りたくないと言っていたので最期まで自分で看ようと考えた。

 以前の家には私と母が暮らしていたが、母が杖をついているときに怪我をして入院したので、その間にバリアフリーにリフォームした。しかしリハビリの結果がよく、結局杖もいらない状態になり、認知症が進んで徘徊を始め。そのため次男が皆で一緒に住もうと言ってくれて、ここに二世帯で介護をしやすい家を建てて引っ越した。その経緯があって、救急病院で死を待つことしかできないと言われて、この家での看取りを決めた。

 以前、介護認定二を受けたときに、包括支援センターと繋がっていたが、サービスは全く使わなかったため認定が切れていた。

 病院からは何の情報もないまま家に連れて帰ってきたが、ご飯を食べない状態だったので、母がどうしてほしいのかわからず、どうしてあげたらいいのかわからないと困り包括ケアセンターに、自宅での介護が「こわくなった」と、電話をした。主治医もいなかったため、介護保険でも医療でも介入できるようにと、ケアマネージャーさんが早速調査に入ってくれた。母のような終末期の場合は審査を急いでくれるということだった。もし認定が間に合わなくても医療保険で大丈夫とその日の十一日から訪問看護が入ってくれた。認定は要介護度四で、毎日訪問看護が入り、なくなったのは十六日である。

 亡くなる一月前に温泉に行った時は、元気でたくさん食べたため、もっと長生きするのだと思っていた。自然死は本当に突然だった。痛みに関しては腰痛があっただけで、あまり苦しまずに家族の生活の音を聞きながら自然になくなった。

 事前に看取りに関するガイドブックのようなものはどこからももらわず、訪問看護師や医師が情報を提供してくれた。家族の対応の仕方に関しては、看護師が指示することになっていたが、二四時間の緊急加算がついているた、家族は本当に何もすることがなかった。また何か分からないことがあったら電話をいつでもかけて下さい、と言ってもらえていたので、心強かった。連絡も密で、情報の申し送りも丁寧だった。一日三回訪問してくれたが、保険の上限枠からはみ出ないようにケアプランを立ててくれた。

 とにかく病院が嫌いな母だった。入院していたときは、毎日病院に呼び出された。この点は、在宅のほうが気軽であった。義理の母は主人の兄が自宅で看取った。主人は次男で既に亡くなっている。兄もいるが、兄嫁と母は合わないので、自分が母は看取ろうと決めていた。特に母とその点について特に話し合ったことはないが、一緒は当たり前だと思っていたのかも。兄からは自分は何も口出ししないからと言われた。実は、施設に入れて同居はやめたほうがいいと言われてもいた。嫁も、一緒に住むことに関しては、本音はいやだと言われたが、息子に諭され、最後は一緒に住みたいと言ってくれた。こういう家庭だから看取りができたし、母を看る事をつらいとは思わなかった。全く外出できない状態が何年間かあり、徘徊のため交番のお巡りさんにお世話にもなった。玄関の内側から出られないように鍵を付け、私がいる時でも鍵はかけておいた。デイケアは一日しか行かなかった。娘と一緒なら行くが一人では行かないと言い出したからである。母の傍を離れられなかった。常に一緒だった。一人で出かけるときは、帰るまで家政婦さんにいてもらえるようにお願いした。一日家政婦さんを雇うと一万四千円くらいかかるので、昼だけお願いして、その間に銀行などに行っていたりした。看取りのときは、毎日ではないが少しは来ていただいた。気がかりなことは孫が祖母の病気を理解できていないことぐらいだった。

 最期は、母の足がベッドから出ていて、足を布団の中に戻した際になんか変だなと感じ、気付いたら亡くなっていた。看護の方に電話をし、その方が先生に電話をしてくれた。先生からはそろそろだと言われていた。母と普通に話していたため、信じられなかったが、母は苦しまずに亡くなったと思う。亡くなった後の顔が綺麗だったから。

 死亡時刻は、その場で先生が確認した時間だった。孫たちには朝起きてきた際に合わせた。

 これまで自分の時は施設でいいと言っていたが、母の看取りの経験後は、自分もここで看取ってもらいたいと思うようになった。

介護語り、看取り語りの影法師 (背景となる知識を参考図書から説明します)

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